第1回公演「繪がたり 瀧の白糸」

  

「繪がたり 瀧の白糸」は、鏡花の「義血侠血」を朗読劇にしたもの。舞台上手に語り手(4人が交替する)が坐り、中央奥にスクリーン、下手側に大きな行燈があって人物がシルエットとなる効果をもつ。スクリーンには挿絵画家 西のぼるの加賀友禅の小紋がスライドで写し出されて、作品の背景と世界を象徴的にあらわすこととなる小説の地の文を主に語り手が語っていき、会話の部分が俳優たちによって語られ演技される。俳優たちは地味な衣裳で無対象演技である。語り手の朗読を主体に劇的な内容を俳優たち(幾役も兼ねる)が演じていく。面白い趣向とアイディアに満ちた舞台で、俳優たちの演技力も確かで見応えがある。
(藤木宏幸「テアトロ」1988年12月号)

昭和63年 3月 石川能楽文化会館            
昭和63年 8月 京都下鴨アートスペース無門館      
昭和63年10月 「第4回地域劇団東京演劇祭」東京三百人劇場
平成元年 2月 小松市堀田能舞台            
平成元年 9月 石川文教会館ホール           
                          
                          
泉鏡花作「義血侠血」より               
構成:田中加夫 絵:西のぼる 演出:浦田徳久      
                          
出演:梅村澪子・浦田徳久・喜多文夫・木村愛子・志水省史
   高輪眞知子・高村 爽・田中加夫・滋野光郎

   
  第2回公演 梅村澪子舞台生活50周年記念公演
老いがたり三部作 「雛納い」 「酸いも甘いも」 「花石榴」


  

これらの三編は、明らかに変奏手法によったオムニバス作品でありながら、共通するのは初老の域に達した男女の老後の生きざまを考える喜劇だという点である。

31歳で無念の窮死を遂げた「島清、世に敗れたり」清次郎と比較してみれば、定年まで管理職として働いてきた会社員の夫婦(「雛納い」)、養老院で余生を送る男女の悪戯(「酸いも甘いも」)、終戦を満州で迎えて帰国した後に、離婚した男女が中国残留孤児の娘をめぐっての無理心中(「花石榴」)と、描かれた内容は全く異なる。(中略)「雛納い」は最も良く出来た作品だと思うが、昭和初年に岸田國士が書いた「明日は天気」や「隣の花」などの家庭喜劇と実に造形性も筆致も似ている。
(野村喬「鏡花劇場パンフレット」1990年5月号)

平成2年5月8日〜11日 石川文教会館ホール     
                         
作:松田章一 演出:荒川哲生 美術:浜名樹義    
照明:皿田圭作                   
                         
出演:梅村澪子・田中加夫・志水省史・高輪眞知子   
   喜多文夫・滋野光郎・飛坂修子・向 眞実子   
   木村慶子・西本裕行(劇団 昴)
     
  第3回公演 「白梅は匂へど・・・」


  

「白梅は匂へど・・・」は端的に言えば、滅びゆく"金沢なるもの"への「挽歌」である。さりとて戦前の東京の文人墨客が、隅田川畔から消えなんとする江戸の残光を惜しんだように、古きよき金沢をただ惜しむだけではない。作者は詠嘆的姿勢を装いつつ、場合によっては、辛辣に痛烈に"今の金沢"を撃つのである。(中略)終幕一つ前の、雪を舞う木橋(浅野川)の場。「秘めた若い恋の終り」が新派の鏡花劇そっくりに甘美に描かれる。川と橋と恋する男女という、ここ40年ばかり通俗小説にさえ使われず、新派の「滝の白糸」にのみ残っていた、アナクロニスティックな常とう的伝説的設定。それも百も承知であえて復活させた作者・演出家の姿勢はまことに興味深い。

作者たちは、劇団新派によらず、金沢市民手づくりの劇団によって、一場なりとも鏡花的金沢を構築する営
為が、とりもなおさず、無機的な均質空間としての都市に急ピッチで変質しつつある金沢への反措定たり得る、と発想したのではなかろうか。つまり鏡花劇場」は「鏡花」を逆手にとったのである。この劇団が、今後、鏡花をどのように扱うか、刮目して待つこととしたい。
(青山克彌「北國新聞」1991年7月24日付)
平成3年7月17日〜19日 石川文教会館ホール     
                        
作:松田章一 演出:荒川哲生 美術・照明:皿田圭作  
効果:山北史郎 衣装:北村敦子 着付け:中山信子  
舞台監督:黒柳和夫                
小道具:菅野ゆきえ・浜里三志・志水省史・向真実子 
                         
出演:喜多文夫・永井先子・高輪眞知子・大塚奈々子 
   滋野光郎・大川 透(木山事務所)・村 生子   
   木村慶子・高村 爽・梅村澪子
     
  第4回公演 「白梅は匂へど・・・」 
 

「地域演劇」なんて特殊な劇のないことを、地域の素材で証明した鏡花劇場の「白梅は匂へど・・・」(松田章一作、荒川哲生演出)。(岩波 剛、1992年上半期ベストワンのための候補十の舞台の1つとしてえらんで。「テアトロ」1992年9月号)

平成4年4月7日〜11日 石川文教会館ホール            

作:松田章一 演出:荒川哲生 美術・照明:皿田圭作 
衣装:北村敦子 効果:山北史郎・藤平美保子 
小道具製作:菅野ゆきえ 舞台監督:野村隆一            

                                                
出演:喜多文夫・永井先子・高輪眞知子・大塚奈々子
   大川 透(木山事務所)・滋野光郎・村 生子

   木村慶子・高村 爽・梅村澪子

     
  第5回公演 「海を歩いて」 
  宙に浮かぶのは、死者を迎える<キリコ>。金沢では盆の墓参りに持っていく。それが、さまよう魂にも、愛と欲望が渦巻く街のネオンにも見える。 この「海を歩いて」は、沖縄戦で生き残った老人が、キリコの前で亡き戦友に「帰って来い」と呼びかける。「いや、帰って来るな」と叫ぶ。ペテン師がはびこり、金、かね、カネと狂奔する現世を、戦地で斃(たお)れた若者に見せたくはないのだろう。キリコは動かない。何かに浮かれた時代、魂はどこに落ち着くのか。金沢の「鏡花劇場」(松田章一代表)は、地方からの文化発信の可能性を追求する。東京から移り住んだ演出家・荒川哲生は、北陸の、ごく普通の人の日常を描くことにこだわる。その熱い思いが、東京偏重の時代を撃つ。(読売新聞夕刊)
  平成4年10月6日〜8日 東京三百人劇場      
                        
作:松田章一 演出:荒川哲生 美術:黒浜和樹   
照明:皿田圭作 効果:山北史郎 舞台監督:野村隆一
小道具製作:福角文雄 記録写真:宮村成信     
                        
出演:滋野光郎・喜多文夫・大塚奈々子・安田綾子 
   高輪眞知子・木村慶子・大塚彩可・南出香樹 
                            
                            
平成5年5月27日〜30日 石川文教会館ホール    
平成5年6月11日〜22日 小松市民ホール      
                        
作:松田章一 演出:荒川哲生 美術:黒浜和樹   
照明:皿田圭作 効果:山北史郎 舞台監督:野村隆一
                        
出演:滋野光郎・喜多文夫・大塚奈々子・山田紗世 
   高輪眞知子・木村慶子・佐伯未来・南出香樹 
   泉やよい・大豊千津子
     
  第6回公演 「和菓子屋包匠」
  鏡花劇場の舞台を観ると、自分が金沢人であると実感する。金沢生まれの金沢育ちである私にとって、金沢は切っても切り離すことの出来ないものであることを感じる。それは、金沢だけでなく誰もが持つものだろう。時には桎梏(しっこく)となり、時には心のより所となる。それは遺族意識にも似て、また排他的かもしれない。しかし、今日の地域離れしている社会にとって、鏡花劇場のように地域と密着した劇団の存在は、非常に重要で素晴らしいことだと思う。生意気なことを書いてますが、今度も頑張ってほしいと言いたいのです。(北野恵美17歳)
  私は金沢の伝統工芸職人であっただけに、職種こそ違うが、人生の「ひたむき」な努力が表現されており、感動の連続でした。私たち高齢者にとって、実演は誠にありがたく感謝のほかありません。益々精進ご活躍のほど、祈っています。
(金沢市 斎藤此農夫79歳)


なめらかな金沢弁に、信念をつらぬく人々。舞台効果も抜群。感動の一刻をありがとうございました。
(金
沢市 北出外志栄70歳)

初めて鏡花劇場の公演を見せて頂き、大変素晴らしいのに感動しました。プロのお芝居を見るより、本当に
よかったです。
ありがとうございました。 (金沢市 若松京子57歳)

 
  平成7年6月7日〜9日 石川文教会館ホール    
                        
 作:松田章一 演出:荒川哲生 美術:浜名樹義  
 照明:皿田圭作 効果:山北史郎 衣装:北村敦子 
 舞台監督:野村隆一・浦田徳久          
                        
 出演:堀場あきら・宮本理香・梅村澪子・滋野光郎
    浦田徳久・永井先子・泉やよい・向 眞美子 
    村 生子・伊興田慶子・米屋政友・喜多文夫
    水上理恵
     
  荒川哲生の仕事 其の一 「俳優教育 荒川塾発表会」 
 

通算53回、金沢ジャンジャンの公演を続けてきてB氏の発言ほど嬉しかったことはない。B氏はこう言ったのだ「あんな女と寝てみたい」あんな女とは、先月終えた芝居「愛をこめてあなたを憎む」の登場人物のジューリア。話は彼女と、仲のいい女友達クレアの二人だけで進行する。(中略)スリリングな筋運びが見どころの心理劇で、配役の二人(高輪眞知子・大塚奈々子)はともに金沢で演劇活動をしている"地元組"(中略)私が感動したのは、B氏が虚構を承知で筋書きに身を任せた、その遊びっぷりである。B氏のセリフによって金沢もなかなか面白い街になったと、私は思ったのだった。

(金沢ジャンジャンプロデューサー村井幸子 1994年4月16日読売新聞)

  平成6年3月25日・26日 香林坊109ホール 

企画・制作:犀ゆう座/荒川塾 演出:荒川哲生 美術:黒柳和夫
照明:竹原 均 効果:山北史郎 舞台監督:浦田徳久

筒井康隆作 「情報」 出演:滋野光郎・北西和則
岸田國士作 「ヂアログ・プランタニエ」 出演:木村慶子・中山由美子
古典落語作 「あまた山」 出演:喜多文夫
中村眞一郎作 「アパートの壁が教えてくれた・・・」 出演:宮本理香
三島由紀夫作 「船の挨拶」 出演:米屋政友
リンダ・マーシャル作 「愛をこめてあなたを憎む」 出演:高輪眞知子・大塚奈々子・倭加
     
  荒川哲生の仕事 其のニ 「大人のための小劇場」
  地域演劇が元気だ。演出家・荒川哲生の金沢での仕事を最近見て、そんな思いを強くした。(中略)荒川の数十年来のテーマが、地域演劇の再生。(中略)「荒川哲生の仕事 其のニ」で、「愛をこめてあなたを憎む」の再演と、新作「フォロー・ミー<他人の眼>」のニ本。金沢の繁華街・香林坊109ホールで上演されたが、なかなかの秀作。俳優の顔のほか、昼間の仕事をもっている人達の演技は、予想外の新鮮な驚きだった。地方公演に財源を頼っている東京新劇団。今後の地方公演に危機感はないのだろうか。(1996年4月24日読売新聞夕刊)
 
  平成8年4月5日・6日 香林坊109ホール 

企画・制作:犀ゆう座/安敦社 演出:荒川哲生 美術:黒柳和夫 
照明:浦 孝幸 効果:小島佳子 舞台監督:増田美輪

リンダ・マーシャル作 「愛をこめてあなたを憎む」
出演:高輪眞知子(鏡花劇場)・大塚奈々子(フリー)・若山知良(新人類人猿)              
                                                
ピーター・シェーファー作 「フォロー・ミー(他人の眼)」                       
出演:風李一成(劇団KAZARI)・東オサム(劇団110SHOW)・渡辺知美(劇団夜の子供)
     
  第7回公演 「ガラスの動物園」
金沢市民芸術村こけら落とし演劇祭 参加作品
  舞台はセント・ルイス市の裏通りにある、ウィングフィールド家の居間と食堂。物語は一家の息子トムの追憶を通し進められて行きます。    
                      
母親のアマンダは、アメリカ南部地方の豊かな農
場主の娘として生まれたのですが、電話会社のしがない月給取りと恋に落ち、今はその夫にも去られ、うらぶれたアパートに作家志望のトムと、不具の娘のローラの三人で生活しています。彼女の最大の関心事は娘のローラのことです。ローラは幼い頃の病気がもとで、脚に障害を持っています。そのせいか、極端に人目を避けたがる性癖の持ち主のようで、彼女はまるで、彼女自身が集めている繊細なガラス細工の動物と同じように壊れやすい存在です。婚期の遅れた娘のことを心配するアマンダは、先ず娘の手に職をつけさせようと試みますが、それに失敗すると、今度は婿探しに熱中し始めます。母にせがまれて、息子のトムは友人のジムを家での食事に招待します。(第一幕)
                      
ところが、偶然にもジムはローラと同じハイスク
ールの先輩で、ローラは彼に対してほのかな恋心を抱いていたのでした。ジムに会い、気を失うほどに緊張しているローラの心を、彼は巧みに和らげていきますが、吾知らずローラの心根をいとおしく思い接吻してしまったとき、 彼は吾にかえます。そして彼は約束があるからと、早々に訪問を打ち切って、婚約者とのデートのために去っていきます。落胆したアマンダの激しい罵声をあとにトムもその父親のようにいずこへとも知れぬ放浪の旅に、さまよい出て行ってしまうのでした。(第二幕)  
        
 

平成9年3月12日〜16日 金沢市民芸術村ドラマ工房 

テネシー・ウィリアムズ作 訳:沼沢洽治 演出:荒川哲生 美術・照明:皿田圭作(S.L.S) 
照明操作:浦 孝幸(金沢舞台) 効果:山北史郎(山北舞台音響) 音響操作:藤平美保子(山北舞台音響)  
衣装:北村敦子 舞台監督:増田美輪(劇団KAZARI) 大道具:西谷 徹(金沢舞台) 
小道具:菅野ゆきえ・福角文雄・山野すゑ子 記録写真:宮村成信                  
                                        
制作:喜多文夫・滋野光郎・高橋栄一・米屋政友 協力:黒柳和夫(金沢舞台)

協力:浅井外司江・莇 裕美子・浅瀬石裕子・泉 奈芳・内田雅子・栄田晴枝・大塚奈々子・川渕満子・
木山尚美
   工藤優子・窪 直恵・勢登香理・谷川せつ子・土本将人・西 美香・西田潤子・西村喜美子浜鍛治青水
   林 和子・林 令奈・生城山朱実・藤居値永子・松田京子・水永和子・森下悦子・横川正枝・
吉田衣里(50音順)

出演:高輪眞知子・風李一成・宮本理香・東オサム
アンダー・スタディー:湊 信次・本村真子

企画:松田章一

     
  泉鏡花記念館開館1周年記念
企画展「婦系図の世界」開催記念 朗読劇「湯島の境内」
  泉鏡花は小説「婦系図」のなかには書かれていない、お蔦と主税の別れの場面である「湯島の境内」を、大正三年、舞台のために書き下ろした。この作品は新派の芝居でも有名な「婦系図」の名場面となった。                
                  
早瀬 月は晴れても心は暗闇だ。   
                  
お蔦 切れるの別れるのって、
   そんなこ
とは芸者の時に云うものよ。
  平成12年11月12日 石川県菓子文化会館3F        
                                   
講演 「湯島の境内について」                 
講師 石川近代文学館 館長 井口哲郎           
                                   
朗読劇 「湯島の境内」泉鏡花作                
演出:井口哲郎 音響・照明:金沢舞台       
                        
出演:高輪眞知子・表川なおき           
                        
                        
主催:泉鏡花記念館
     
  泉鏡花記念館開館2周年記念 朗読劇「山吹」
  修善寺温泉の裏道の万屋。店の土間で酒を飲んでいる老いた人形使の辺栗藤次。そこへ嫁ぎ先の姑や小姑からのひどい仕打ちに耐えきれず家出をして来たばかりの小糸川子爵夫人の縫子と、保養に来た洋画家の島津正が出会う。島津は縫子のことは知らないが、縫子は以前から島津のことを知っており、かねてから島津のことを慕っていた。ても今は追手から逃れるために、一緒に連れて行って欲しいと島津に頼むが、島津は「それは迷惑です」と山手に去る。ひとり残された縫子は、ようやく酒の勘定を済ませた辺栗藤次に近づき、自分は財産をたくさん持っているから、お前の望みをひとつだけ叶えてあげようと告げる。人形使は古縄を手にし縫子を樹立に連れて行き、雨傘を引裂いて、自らを縄で縛り、血の出るまで、息の止まるまで打って欲しいと懇願する。縫子は始めは戸惑うが、望みどうり打ちのめしている所へ島津が再び現れ止めに入る。人形使は若い頃に犯した数々の罪障を懺悔し罪滅ぼしの為に打たせたのだいう。縫子は島津への想いも届かず、世の中に何の望みも願いもなくなり、女を虐げた罪を背負った人形使と共に現世から旅立つ。島津は苦悶の様子で雨に打たれていた・・。 
 

戯曲「山吹」は泉鏡花が大正十二年六月「女性改造」第二巻第六号に発表した作品である。生前には上演されず、作家三島由紀夫が「今、上演されたら人を瞠目せしめるような佳作が残っている」と言った。初めて上演されたのは昭和五十二年俳優座劇場公演で、五十五年には板東玉三郎らにより上演された。

                   
平成13年11月11日 石川県菓子文化会館3F    
                       
朗読劇「山吹」泉鏡花作 台本・演出:浦田徳久(鏡花劇場)
出演:鏡花劇場
   滋野光郎・高輪眞知子・表川なおき・杉原幸子

                       
                       
主催:泉鏡花記念館 

     
  小松市立図書館 森山啓に親しむ集い 朗読「紅蓮物語」
 

平成14年8月25日  小松市立図書館

「紅蓮物語」森山啓 作より

朗読「紅蓮物語」 出演:高輪眞知子・表川なおき

     
  第3回金沢泉鏡花フェスティバル協賛
泉鏡花記念館開館3周年記念 朗読「化鳥」
 

豪邸の奥方として裕福な暮らしをしていた頃、母はある日猿回しの老人と会った。老人は世間の冷たさを恨み、猿を土手に残して去る。猿も同然の人々だから同じ仲間である猿を餓えさせることはあるまいと。その時母の胎内にいたのが、語り手の少年廉である。そして今、零落して父もなく、橋の通行人からあがる橋銭で母と子二人かろうじて暮らしている。母は猿回しの老人と同じ思考法を廉に伝授する。世間の人間はみな禽獣と変わらぬ「畜生め」なのだという、母と老人と廉しか知らぬ「ありがたい」教えである。ある時猿をからかっていた廉が川に落ちる。廉を助けてくれたのは羽の生えた美しい姉さんだと母はいう。どうやらその人だけは畜生ではないらしい。もういちどその人に会いたくて探しに行った梅林の中で、廉は自分が鳥になりそうな気がして叫び声をあげる。その時抱きしめてくれたのは、心配して廉を探しに来た母だった。姉さんに会うためにまた溺れてみようか、でもまあいい、母様がいらっしゃるから、母様がいらっしゃったから。

  平成14年11月4日 石川県菓子文化会館3F    
                       
朗読「化鳥」泉鏡花作 
演出:黒柳和夫(金沢舞台) 音響・照明:金沢舞台
出演:高輪眞知子(鏡花劇場)

                       
                       
主催:財団法人金沢市文化保存財団・泉鏡花記念館
 
     
  泉鏡花記念館開館5周年記念 朗読劇「海神別荘」
  ああ貴女。私を斬る、私を殺す、その顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の清しさ、眉の勇しさ。はじめて見ました、位の高さ、品の可さ。もう、故郷も何も忘れました。
 

平成16年11月7日 石川県菓子文化会館3F    
                       
朗読劇「海神別荘」泉鏡花作 
演出:黒柳和夫 音響・照明:金沢舞台

出演
僧都 東オサム  侍女1 高輪眞知子(鏡花劇場)

女房 北まち子  美女 小川雅美
  博士 米屋政友(鏡花劇場)
侍女2 洞庭 静(鏡花劇場)  公子 表川なおき(鏡花劇場)

                       
                       
主催:泉鏡花記念館
 

 
BACK
     
     

 

inserted by FC2 system